2018年05月11日

"SF inside" Day 2018分科会の見どころ紹介 Vol.2

"SF inside" Day 2018 分科会の見どころ紹介 Vol.2
(西川ゴム工業株式会社 環境安全部・三井E&S 造船株式会社 艦船工場管理部)
青木 安輝
◆ 西川ゴム工業株式会社 環境安全部:
「小集団活動でいきいき職場づくりに挑戦」
(発表者:北村 恭子氏・保健師、片山 秀美氏・産業カウンセラー)

北村さんは何年も前からSFアカデミアのセミナーや大会に参加してくださっていましたが、転職をきっかけに"SF inside"活動をスタートさせることに挑戦しました。

もともと意欲旺盛な北村さんですが、新しい職場で片山さんという素晴らしいパートナーに恵まれたことが大きな後押しとなりました。
前の職場ではなかなかSF活動をするのが難しいと感じていた北村さんは、西川ゴムに転職して片山さんと出会ったときに「この人となら!」とピンと来たそうです。その頃の僕へのメールはその出会いを喜ぶ言葉が本当にうれしそうに踊っていたのが印象的でした。

組織の中では色々な風が吹いています。SF活動をしようとすると逆風が吹いてくることもありますよね。組織開発的な場面でのSF活用は、いかに「SF仲間」を見つけるかというのが重要になってきます。北村さんが「SFで何かやってみたい」と強く想い続けたことで、「SF仲間」を見つける感度が高くなっていたのでしょう。
このお二人のチームワークは一つの重要な注目ポイントでしょう。

発表内容は自部署を"SF inside"な小集団活動で活性化する試みとその結果です。もともと組織文化の中にSF的な要素が見られない、むしろ問題志向的な捉え方の方が強い製造業の職場で、正面きって SFの説明もしづらいところから始まって、だんだんと信頼を得ていくプロセスが見どころですね。周囲の反応をどのように受けとり、どんなところに気を遣いながら進めていったのか、ご注目ください。

活動の成果は、アンケートを数値化してしっかり説得力のある形にしておられますし、形にならない成果も色々と口頭で発表してくださるようです。何よりも転職してすぐにこのような活動を実現してしまった北村さんの熱い想いに触れてみてください。

★この分科会紹介ページ↓
https://www.j-sol.org/sf_inside_day_contents.php#nishikawa

◆ 三井E&S造船株式会社 艦船工場管理部:
「雰囲気の暗い職場を明るくするために行った、たった2つのこと」
(発表者:山下 稔貴氏)

「山ちゃんと8+1人の仲間たち」という職場チームの"SF inside"活動は、分社化前の旧三井造船株式会社時代の2013年に始まった「SFモデル職場」という施策が継続されてきた中での取り組みです。

ここでは「SFモデル職場」について紹介します。2012年に三井造船玉野事業所で試行的に実施した管理職向けのSF研修が大好評で、「こういうことは上から下まで巻き込んで一緒にやった方が良い」というアンケート結果が出たことで始まったコミュニケーション環境改善活動です。

数千人が働く工場の中からいくつか選抜された職場が約一年間SFを応用した職場活性化に取り組みます。出だしの研修は私(青木安輝)が講師をさせていただきますが、現在はフォローアップは担当者の方が実施しています。そして何よりも活動内容はチームの皆さんが自主的に決めて、実行し、調整し、継続していきます。

私がうれしい気持ちでびっくりしたのは、この「SFモデル職場」活動が昨年の会社全体の分社化というかなり大きな変革の中で色々揺れることもあったであろう中で継続しているという事実です。

2014年のJ-SOL7でSFモデル職場の成果を初めて発表して以来、この大きな工場の中で少しづつ「コミュニケーションを大切にしよう、SFで仲間を大切にしよう」という想いに共鳴する人たちが増えてきたのだろうと私は想像します。トップダウンで始まったことでもその実質的内容が現場の自主性に任され、しかもその成果がしっかり認められるという循環をつくることで、つくりものではない本物の組織文化になりつつあるのだと思います。ここまでの継続を可能にしてきた担当者の方の努力には本当に頭が下がります。

さて、「山ちゃん」こと山下さんの写真をウエブサイトで見てください。
素敵な笑顔ですよね。職場を明るくするために実行した2つのこととは何なのか、山下さんの元気な声をお聴きするのが楽しみです♪

★この分科会紹介ページ↓
https://www.j-sol.org/sf_inside_day_contents.php#mesk

SF inside Day by 青木 安輝
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2018年05月08日

"SF inside" Day 2018 分科会の見どころ紹介 Vol.1

"SF inside" Day 2018 分科会の見どころ紹介 Vol.1
(ZACROS横浜事業所・ZACROS名張&三重事業所)
藤沢 さつき
◆ 藤森工業株式会社(ZACROS)横浜事業所:
(発表者:桑本丈弘氏 他)

横浜事業所からは毎年「SF実践コース」にご参加頂いていますが、この事業所の数ある素晴らしいことの一つが、参加者の自発性を大切にしている事です。そして、歴代参加者が取り組んだテーマは各々が個人的に見つけた「やりたい事」でしたが、事業所の中でSFのバトンが上手く繋がって「進化」させている点にご注目!!

今年の発表は、昨年の全体会で発表をされた畑中さんからバトンを受け、後任の班長となった桑本さんが「進化」させた活用事例です。

桑本さんの取組の中で、私が特に驚きと尊敬の念を抱いた点は、普通なら経営者や管理職、あるいは教育部門のスタッフが考えて導入するような仕組みを、製造課の一班長である桑本さんが考案し、導入したという事。しかも、業務改善や人材育成に直結する切り口でSFが活かされる内容に組み上げた点です!

具体的には2つ。

一つ目は、どこの企業にもあるけれども活用は今一になりがちな「目標管理シート」。会社から降りてくる目標を達成するためのシートだったものを、目的(会社でのなりたい自分の姿)・目標・その為の思考と行動・達成基準と、個人の成長プロセスを大切にしながら、達成に向かうシートを考案しました。この中にSFの 要素が上手く組み込まれています。

二つ目は、そのシートを効果的に活用する為に考え出した「バディシステム」。多くの企業で導入しているメンター制度を、大きく進化させて創り出された仕組みで、その土台になっているのが、SFアカデミアの3つのクリードです。

「認め合う・学び合う・応援し合う」をバディ同士の会話や仕組みの中に入れ、お互いの成長に関わっていくことで、自分自身の成長は勿論、チームとしての成長も促進していける上に、会社の発展にも繋がる見事なシステムです。このバディ同志の会話や、メンターであるマネージャーとの会話は、SFコミュニケーションのシンプルな要素に沿って行われるようにガイドラインが設けられています。

「SFの理論はシンプルだけど、実践はアートね」と言ったインスー氏の言葉が、まさに裏付けされるような内容だと感動しました。

詳しい内容は、SFiD当日の分科会での発表を楽しみにしてください。

◆ 藤森工業株式会社(ZACROS)名張&三重事業所:
(発表者:岡村 冴氏、三浦康一氏、他)

名張事業所は"SF inside"組織の元祖であり、J-SOL2から毎年発表を継続されています。実践コースにも毎年ご参加頂いていますが、参加される方の取組テーマが、毎回違う視点や場面であるところに、SF活用の幅の広さを感じます。

今年は、技術課課長という管理職の視点と品質保証課の若手の視点という、全く違う角度の取組みが紹介されます。

これだけ長くSFを取り入れている事業所にも関わらず、お二人の取組は、SF用語を使わず、SFを感じさせないところがユニークです。
SFが入っていない組織や、SFのような取り組みに懐疑的な人がいる組織でも、このようなやり方をすれば抵抗感無く、SFのエッセンスを体感する事が出来ると思いました。

一見、コミュニケーションの活性化がテーマの様に思える事例ですが、業務効率UPという真の目的があり、実際に業務の中で変化が起きています。

品証課の岡村さんの取組は上述の通りSF用語は一切使っていないのに、その実践は、「SFの実践哲学の3つの要素」に沿っていると感じます。
これは実践をする過程において、岡村さん自身の気づきから起きた事です。

技術課課長の三浦さんは、業務として行っている技術報告会を活用し、本来の目的である業務(技術)の情報共有や活発な意見交換をテーマに、コミュニケーションの基本的スキルUPを意図した取組をしています。
その進行の中に、SFコミュニケーションの要素を自然に取り入れています。
技術課長としての「業務効率のUP」という明確な意図を感じる事例であり、三浦さんの緻密さが際立っている面白い活用と思います。

二人ともSFを実践している場面は違いますが、成果として部署内だけでなく、他部署との連携にも変化が起きている事が素晴らしいと感じました。

以上、藤沢よりSFiD 2018分科会の見どころ「ZACROS編」でした!

SF inside Day by 藤沢 さつき
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2018年04月10日

"SF inside" Day 2018 参加申込受付開始!!

"SF inside" Day 2018 参加申込受付開始!!

こんにちは。ソリューションフォーカスの青木安輝です。

お待たせいたしました。"SF inside" Day 2018のプログラム内容が確定し、本日より参加申込の受付を開始いたします。

【プログラム内容】共有事例の内容がこちらで確認できます↓
https://www.j-sol.org/sf_inside_day_contents.php#jirei-list
↑クリックして下にスクロールすると全て見ることができます。
まずは、今年の発表はどのようなものがあるかをご覧ください。

【早割】4月30日までに申し込むと3,000円の割引となります!
申込はこちらから↓
https://www.j-sol.org/sf_inside_day_regi.php

【法人早期一括申込のおすすめ】
同じ会社から複数人数参加したいが、早期申込割引の期限までに参加メンバーを決められないという場合は、「法人早期一括申込」制度をご利用ください。代表者が人数だけ明示して申し込んでおくだけで、早割料金で、大会直前までメンバー変更が可能です。
詳細:https://www.j-sol.org/sf_inside_day.php#houjin

★"SF inside" Day 2018 とは:
"SF inside" Day(旧称:J-SOL)は今年で11回目となる全国的なソリューションフォーカス活用事例共有大会で、2008年から毎年一回開催されています。今年の大会テーマは「SFという生き方」でソリューションフォーカスを学び、実践することが自分の人生にどのような影響を与えてきたかに注目してみます。事例発表をする方々にも「SF活用の経験はあなた自身にどのような影響を与えていますか?」という質問に回答していただき、上記サイトの各事例案内の中で紹介しています。
【これまでの開催実績】
欧州SOL World国際大会の影響を受けて開催してきたJ-SOLの時代(2008〜2015年)から"SF inside" Dayに変わってからの過去2回の大会概要に関して、こちらでご覧いただくことができます↓
https://www.j-sol.org/archive/sfid2017.php
↑左側のコラムで見たい大会のボタンをクリックしてください。

★「SFベーシック」事前受講のおすすめ:
"SF inside" Day 2018に参加することを検討されている皆さんの中で、まだ「SFベーシック」を受講されていない方に、4月28日(日)の受講をおすすめします。この回が大会前に参加可能なラストチャンス です。受講済みの方でも、久しぶりに再受講してSF感覚をリフレッシュさせてから、大会に臨むのも良いアイデアですね!
【「SFベーシック」詳細】
https://sf-academia.jp/program/start.php
【「SFベーシック」参加申込フォーム】
https://sf-academia.jp/registration/reg_form.php

遠方よりご参加される方で、宿泊の必要がある方は、早めにホテル等のご予約をお済ませください。海外からの観光客の増加により、以前より都内のホテルの予約がとりづらい状況が続いています。ご注意を!

今年もSF実践者の祭典"SF inside" Day 2018で皆様とお会いできるのを楽しみにしています♪

★ その他のニュース ★

第二回「ミドルエージャーの100年人生俯瞰」WS参加申込受付中
4月29日(日) @ちよだプラットフォームスクエア

参加者同士が「認め合い、学び合い、応援し合う」というSFアカデミア・クリードに則して自分の人生の「これまで」と「これから」を「語り」「聴く」場です。

この1日に投資することで、その後の10,000日をどう生きたいかについて、今自分の想いがどこにあるかを確かめることができます。人生中盤から終盤にかけて自分にとって納得感のある生き方をするためには、人からの教えではなく、自分自身との対話を深めるしか方法がありません。このワークショップでは、自分の言葉で自分の人生を語ることを大事にします。

2月に開催された第一回は大変好評でした。
参加者の感想はこちらをご覧ください&darr
http://sf-news.sblo.jp/article/182470390.html#006

ワークショップの企画意図、概要、具体的進行はこちらでどうぞ↓
http://sf-news.sblo.jp/article/182470390.html

★★ お申込みはこちらからどうぞ↓ ★★
http://sf-academia.jp/registration/reg_form.php#spesialWS

皆様のご参加をお待ちしております!

大阪「SFアカデミア」プログラムのお知らせ

今年度「SFベーシック」&「SFフォーラム」は東京に加えて、大阪でも開催します。関西方面の方が参加しやすい方は日程をご確認の上、是非参加をご検討ください。大阪プログラムは青木安輝が講師を務めます。
http://sf-academia.jp/program/start.php

SF inside Day by 青木 安輝
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2018年03月14日

敬意のこもったコミュニケーションがアイデアと行動を生み出す!

敬意のこもったコミュニケーションが
アイデアと行動を生み出す!
〜 ジョン・マーフィー博士の通訳をして学んだこと 〜

青木 安輝

3月最初の週末にBTNJ(ブリーフセラピー・ネットワーク・ジャパン)主催のワークショップでジョン・マーフィー博士の通訳をJ-SOL以来コンビで通訳することが多くなった西田博明さんとご一緒させていただきました。「子供と青年、学校での難問への解決志向アプローチ」と題されたWSの副題は「尊厳をもって変化することを支援する実践的技法」でした。

マーフィー博士のワークショップ
「尊厳をもって」というと少し大仰に聞こえるかもしれませんが、マーフィー博士のアプローチは、まさに相手の尊厳を大切にする深い配慮に満ちたもので、しかもとてもシンプルでした。楽しく学びの多い2日間を過ごすことができたので、その重要ポイントを皆さんと共有したいと思います。子供向けカウンセリング領域のトピックですが、一般的なコミュニケーションにも十分あてはまる内容です。

アーカンソー中央大学で心理学とカウンセリングを教えているマーフィー博士は子供向けのカウンセリングや学校における問題解決を得意分野としています。理論背景や影響を受けた人としてSF以外にも、ミルトン・エリクソン、ブリーフ戦略セラピー、社会構成主義、ポジティブ心理学その他様々な要素を上げておられますが、解決志向的要素が重要な位置をしめていることは確かです。また、マーフィー博士の温厚な人柄の中にすべてがほどよく融合していて、大変シンプルな形で提示された内容なので、理論や技法の来歴はあくまでも背景であって、実践に役立つ内容自体が主であることが印象に残りました。

ここで紹介したいポイントは以下の3点です:

  1. まず支援する側とされる側の関係性を築くことを大切にする。
    (話し合いができる相手だと思われなければ、表面的な会話をするだけ。)
  2. 本人がもともと持っているもの、自分で考えたことを活かす。
    (支援者側の理論や解決アイデアを押し付けない。)
  3. 「うまくいっていること」の上に小さなことを積み重ねていく。
    (問題の渦中でもうまくいっている「例外」は必ずある!)

とてもベーシックなことばかりですが、マーフィー博士の丁寧な語り口と効果的なセッション動画(一つひとつはたった数秒から数十秒程度の短いもの)の活用で、あらためて基本に忠実って大事だなあと感銘を受けました。

では、一つひとつを詳しく振り返ってみます。

1, まず支援する側とされる側の関係性を築くことを大切にする。
(話し合いができる相手だと思われなければ、表面的な会話をするだけになる。)

Lambert & Oglesの有名な研究に「効果的なセラピーにおける変化の中核となる共通要因(Common Factors)」があります。これはうまくいったセラピーにおいては何がその要因となったかの割合を調べたものです。その内訳は、クライアント要因が40%、セラピストとの関係性要因が30%、希望(うまくいくだろうと思える)要因が15%、理論・技法要因が15%です。これ以外にも共通要因の研究はいくつかありますが、マーフィー博士はこのバージョンが技法を活用する際のガイドラインとしてフィットしているので、これをよく使うそうです。

もっとも大きな割合を占める「クライアント要因 (40%)」とは、クライアントがもともともっているもの(内的リソースや本人の環境中に存在する様々な資源をすべて含みます)のことです。端的に言えば、本人がもっているものを活かそうとするときにカウンセリングの効果は最大になるということです。これは重要ですが、2番のところで詳しく扱うので、まず「セラピストとの関係性要因 (30%)」についての話をしましょう。支援者はクライアント要因を大切にしようとするならば、本人がもともと持っている有用な資源に気づくように、意識の焦点を自らが持つ、あるいは自分の周囲に存在する有用なものに向けるよう誘導しようと思います。しかし、相手が「この人の言うことなら聞いても良いな」と思っていなければ、どんなに正しいことを伝えようが、クライアントの意識に変化は起こせません。

もっとも邪魔になるのが、上目目線で「私の言うことをききなさい。あなたはわかっていないのだから」という意味あいで伝わってしまうメッセージ(言語or非言語)です。これでは自分には価値がないと扱われている感覚になってしまいます。「一方的に何かを言われる」関係になりそうだと思えば、誰でも耳を閉ざしたくなります。逆に自分のことを純粋に知ろうとしてくれていると相手が思えば、信頼感が生まれます。マーフィー博士はこれを小さなことを丁寧に積み上げていくやり方で達成します。

小さな子を相手にするような面談でも、最初に「これからね、君が今困っていることに関してうまくやれるように私が何か助けられるといいなと思っているんだけど、そのためにはまず君のことを知りたいので、教えてもらえるかい?」と尋ねます。文化人類学者の態度を見習ってくださいと博士は言います。彼らは未知の異文化環境でフィールドワークをする際に、全てのことを自分の側の尺度で見ることを放棄します。そして、現地の人にはどのような意味があるのか、背景にどんな考え方があるのかを知ろうとするために、自分を白紙の状態にします。自分の尺度で現地人を扱えば、下手をすると侵略者と見做されます。同じように、支援者も相手のことをわかったつもりにならずに、「あなたのことを教えてください」という学ぶ態度を取ることが大事です。

博士は10秒程度の短い動画で、小さな子供相手の面談冒頭で「あなたのことを支援するために、あなたのことを教えてもらいたい」という意味の言葉をかける場面を見せてくれました。それに対して子供がうなづきます。何げないやり取りですが、博士の声のトーンや聞き方が敬意を感じさせてくれるのか、子供がうなづくときに安心して息が深くなる様子が見てとれます。

博士がもう一つ面談冒頭場面で相手に許可を求める場面を見せてくれました。20代の若者相手の面談で、「ノート取ってもいいかな?」と尋ねるほんの5秒程度の動画です。相手は「ああ、もちろんいいよ。」という雰囲気で頭を縦に振ります。ここでもやはり相手のガードが下がっていく様子が見てとれます。

こんな小さなことなんですが、許可を求めるという行為は相手を尊重しているというメッセージです。それがルーティーンとして響いてしまっては効果がないでしょうが、言葉通り本当に相手に許可を求める雰囲気で聞かれれば、支援者が上ではなく、同等の立場にたっているということを伝えるメッセージになります。そして、「この人とはわかり合う話ができそう」という安心感が生まれます。

「心理系のセミナーで講師が動画を見せるというと、達人の素晴らしい面談でその技が冴えわたる場面を見本として見せてもらうというイメージがあるでしょうけど、実はこんな小さなシンプルなことの積み重ねを大事にすることが重要なんですよ」と博士が説明するのが新鮮で、腑に落ちました。

そして、博士はときどき自分のマイクを指で叩いて、「ドンドン、ドンドン」という音を発生させてこう言います。「これはクライアントの心拍です。これを感じ取ること、そしてそれを活かす方向で会話を進めることが重要です。相手の主体性が活かされることがもっとも大事なのです。」相手の心拍を感じるというのは、文字通りというよりはメタファーですが、とても臨場感のある例え方でした。

2, 本人がもともと持っているもの、自分で考えたことを活かす。
(支援者側の理論や解決アイデアを押し付けない。)

博士の著書「学校で役立つブリーフセラピー」(金剛出版)にも収録されているエピソードですが、モリーという10才の女の子との面談で、彼女が「クライアント本人の考えを活かす」ことの重要性を素晴らしい言葉で表現しているので、そのエピソードを紹介します。

モリーは両親が離婚して情緒不安定でした。既にグループ面談を受けたり、複数のセラピストの個人面談を受けた後でしたが、それらが役に立たず、悪夢にうなされることが多い状態でした。母親のベッドで寝ているので、「分離不安」というレッテルが貼られて、薬が処方されてもいました。それまでどのカウンセラーもモリー自身が問題(とその解決)をどう考えているのかを尋ねることはなく、ただ査定され、問題が類型化され、介入法が処方されただけでした。しかし、問題はまったく解決しなかったのです。

そして、母親とある新しいカウンセラーを訪ねたところ、初回面接で「モリー自身は問題解決にどんなことが役に立ちそうだと思うか」を尋ねられました。モリーは今まで意見を聞かれたことがなかったのでびっくりしましたが、「(悪夢や不安を寄せ付けないように)ぬいぐるみや枕でベッドにバリケードを作ったらどうかしら」と言ってみました。そしてその通りに実行すると、2回目の面接では成果があったことが報告されたのです。

そして3回目の面談ではもう自分の部屋で眠れるようになったことを喜んで報告するとともに、以下のような言葉を言い放ちました:

「カウンセラーの人たちってわかってないのよ。(クライアントにも)自分の解決法があるのよ。でもカウンセラーは言うの。『これを試してみましょう。次はあれもね』と。でも全然助けにはなってないの。『本当はそうしたくないんだけどなあ』という感じになるのよ。(中略)セラピストの人たちに言いたいのは、私たちは答をもっているということ。私たちは答を前にひっぱり出すのを手伝ってくれる人が欲しいだけなのよ。答は屋根裏かどこかに入ってしまってるんだわ。人にどうしたいかを尋ねた方がずっといいわ。そうすれば、どうしたらいいかを、その人はしゃべりたがるもの。ただ、それが役に立つかわからなくて、試してみようとしたがらないだけなのよ。」 (「学校で役立つブリーフセラピー」より抜粋)

マーフィー博士は、モリーがこの言葉を小気味良くしゃべる動画を見せながら、「もうこれ以上うまくポイントをついた言葉は見当たりません。この10才の子は私たち支援者に必要な教訓を見事にぴったりな言葉で伝えてくれています」と説明しました。

確かに、色々な場面で人に助言しようとするときに、まず本人の考えも聞かずにアドバイスしてしまうと、“いいアイデアなはず”なのになぜか「だけどねぇ・・・」とそれではダメな理由が返ってきてしまうことってよく経験しますよね。フィンランドのSF伝道師ベン・ファーマンも、NIHという略語をよく使います。Not invented here.の略で、直訳すれば「ここで発明されたことではない」ですが、他所からもってきたものは受け入れられにくいという意味です。逆に、「あなたのおっしゃる通りに、・・・をすれば良いのでしょうね」という言い方をすると、多少こちらの意見を混ぜても相手にとって受け入れやすくなるというテクニックとして、ベンはジョークのように伝えてもいます(笑)。

モリーが動画の中で誇らしげに、「私が自分で考えたアイデアでうまくいったの!」という力強いセリフを聴くと、そういうのを引き出すお手伝いをしたくなります。

3, 「うまくいっていること」の上に小さなことを積み重ねていく。
(問題の渦中でもうまくいっている「例外」は必ずある!)

このテーマで印象に残ったことが2つあります。一つは、漫画である部屋の様子を見せて、良いところとダメなところをリストアップする課題。この漫画では、きちんと片付けられていない部屋で母親と思われる女性が酒のグラスを片手に行儀悪い姿勢でダラっとソファに寝そべっていて、子供が勝手なことをしていたりします。これはもちろんダメなところを見るとらえ方です。しかし、よく見ると、家具類はちゃんとそろっていたり、食べるものは用意されていたり、いろいろ良いところも見つかるのです。マーフィー博士はこう言います。「人は誰でも問題によって強いストレスにさらされていると、視野狭窄に陥り、悪いところしか見えなくなります。私たちの仕事は、そんな中でも既に存在する良いところも見えるように視野を広げるお手伝いをすることです。」

「SFアーティストクラブ」のメンバーで大分で活動をしている中村亜紀子さんは、「プラスの眼鏡」をかけてみようというコンセプトを地元の学校で伝える活動をしていて、中学生たちが驚くほど新鮮な捉え方をすることに驚くそうです。問題の渦中にいるときは、誰でも良いところが見えにくくなりますが、普段から「プラスの眼鏡」をかける練習をしていると、いざというときに役に立ちそうですよね。中村さんは現在「プラスの眼鏡」研修で色々なところから引っ張りダコだそうです。

もう一つ印象に残ったのは、「例外ビデオ」をつくる「セルフ・モデリング」という手法。ある子どもの問題行動ではなく良い例外行動を増やしたいという場合:

  1. これから増やしたい(つまり既に時々は実行することがある)行動を特定する。
  2. その子が望まれる行動をとっているところをビデオに撮る。自然にとっている行動が観察できそうなら、待っていてそれを撮れば良いし、シナリオを打ち合わせた上で、ある意味“つくりごと”として撮るのもあり。
  3. いくつかの違った場面でその子が望む行動をとっているところだけを編集して1〜3分程度の短い「大ヒットビデオ」を作る。
  4. 2週間の間、1日おきにその子に動画を見せる。

ダウン症のお子さんに対してこの手法を使ったところ、普通だとできないと思われていた望ましい行動がグンと増えたという事例を、やはり動画で見せてもらいました。素晴らしいです!問題を分析するのではなく、既にある良いところが意識にのぼるようにする回数を増やすことでその行動が増える。こういう回路をつくる方法は他にもいろいろあり得ると思います。

私の知り合いでゴルフが短期間で上達した(10ラウンド程度しかしていないのにスコアが90を切った!)人がいて、どうやったのかを聞いてみました。本人曰く、「練習や実戦ラウンドの後に、家に帰ってお風呂に入るときにさ、その日の良かったショットだけを思い浮かべるんだよ。あとは全部忘れる!それだけさ。」もちろん才能もあったのでしょうが、示唆に富む話です。

今回のレポートは以上です。マーフィー博士は "What's Right With You" の著者バリー・ダンカンさんとも親しくて、彼のチームが開発したセッション評価尺度(面談終了時にクライアントにしてもらうスケーリング)や効果評価尺度(前回面談のあとどのような変化があったかのスケーリング)を大切にすることで、クライアントからのフィードバックを頼りに相手に合った対応を調整し続けることの重要性も強調していました。それはまた別の機会にレポートさせていただきます。

今回の通訳仕事を通じて不思議に思ったのは、マーフィー博士の話す内容はコンテンツとしては僕にとって目新しいものはあまりなく「ああ、知ってる」というものばかりなのに、なぜか新鮮味がありインスパイアされるということでした。きっとそれを単に知っている人ではなくて、“それを生きている”人として話をするからなんだと思います。自分もそうありたいものだと思いました。

<歌のおまけ>
歌のおまけ
実はジョン(ここからなぜかファーストネーム・笑)と僕は音楽の趣味が一致していることが判明!六本木の洋楽専門カラオケBAR(なんと泊まっていたホテルの三軒となり!)で前夜に大盛り上がりしました。 ジョンは旅行用のミニギター(Washburn "Rover" travel guitar)を持参したくらい音楽好きで、フェイスブックには音楽専用のアカウントも持っています。残念なことに懇親会場は演奏禁止だったので、受講者の皆さんからワークショップの最後に何か演奏をとリクエストがありました。ジョンは子供たちへの支援に関するセミナーだったからCSN&Yの"Teach Your Children"を一緒にやろうと僕を誘ってくれて、ワークショップの最後に二人でハモりました。休憩中に10分ほど練習しただけなので、粗い感じではありますが、よかったら聞いてください♪
SFアカデミア 青木安輝
posted by 株式会社ソリューションフォーカス at 22:17| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー/ワークショップ レポート
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