2018年03月14日

敬意のこもったコミュニケーションがアイデアと行動を生み出す!

敬意のこもったコミュニケーションが
アイデアと行動を生み出す!
〜 ジョン・マーフィー博士の通訳をして学んだこと 〜

青木 安輝

3月最初の週末にBTNJ(ブリーフセラピー・ネットワーク・ジャパン)主催のワークショップでジョン・マーフィー博士の通訳をJ-SOL以来コンビで通訳することが多くなった西田博明さんとご一緒させていただきました。「子供と青年、学校での難問への解決志向アプローチ」と題されたWSの副題は「尊厳をもって変化することを支援する実践的技法」でした。

マーフィー博士のワークショップ
「尊厳をもって」というと少し大仰に聞こえるかもしれませんが、マーフィー博士のアプローチは、まさに相手の尊厳を大切にする深い配慮に満ちたもので、しかもとてもシンプルでした。楽しく学びの多い2日間を過ごすことができたので、その重要ポイントを皆さんと共有したいと思います。子供向けカウンセリング領域のトピックですが、一般的なコミュニケーションにも十分あてはまる内容です。

アーカンソー中央大学で心理学とカウンセリングを教えているマーフィー博士は子供向けのカウンセリングや学校における問題解決を得意分野としています。理論背景や影響を受けた人としてSF以外にも、ミルトン・エリクソン、ブリーフ戦略セラピー、社会構成主義、ポジティブ心理学その他様々な要素を上げておられますが、解決志向的要素が重要な位置をしめていることは確かです。また、マーフィー博士の温厚な人柄の中にすべてがほどよく融合していて、大変シンプルな形で提示された内容なので、理論や技法の来歴はあくまでも背景であって、実践に役立つ内容自体が主であることが印象に残りました。

ここで紹介したいポイントは以下の3点です:

  1. まず支援する側とされる側の関係性を築くことを大切にする。
    (話し合いができる相手だと思われなければ、表面的な会話をするだけ。)
  2. 本人がもともと持っているもの、自分で考えたことを活かす。
    (支援者側の理論や解決アイデアを押し付けない。)
  3. 「うまくいっていること」の上に小さなことを積み重ねていく。
    (問題の渦中でもうまくいっている「例外」は必ずある!)

とてもベーシックなことばかりですが、マーフィー博士の丁寧な語り口と効果的なセッション動画(一つひとつはたった数秒から数十秒程度の短いもの)の活用で、あらためて基本に忠実って大事だなあと感銘を受けました。

では、一つひとつを詳しく振り返ってみます。

1, まず支援する側とされる側の関係性を築くことを大切にする。
(話し合いができる相手だと思われなければ、表面的な会話をするだけになる。)

Lambert & Oglesの有名な研究に「効果的なセラピーにおける変化の中核となる共通要因(Common Factors)」があります。これはうまくいったセラピーにおいては何がその要因となったかの割合を調べたものです。その内訳は、クライアント要因が40%、セラピストとの関係性要因が30%、希望(うまくいくだろうと思える)要因が15%、理論・技法要因が15%です。これ以外にも共通要因の研究はいくつかありますが、マーフィー博士はこのバージョンが技法を活用する際のガイドラインとしてフィットしているので、これをよく使うそうです。

もっとも大きな割合を占める「クライアント要因 (40%)」とは、クライアントがもともともっているもの(内的リソースや本人の環境中に存在する様々な資源をすべて含みます)のことです。端的に言えば、本人がもっているものを活かそうとするときにカウンセリングの効果は最大になるということです。これは重要ですが、2番のところで詳しく扱うので、まず「セラピストとの関係性要因 (30%)」についての話をしましょう。支援者はクライアント要因を大切にしようとするならば、本人がもともと持っている有用な資源に気づくように、意識の焦点を自らが持つ、あるいは自分の周囲に存在する有用なものに向けるよう誘導しようと思います。しかし、相手が「この人の言うことなら聞いても良いな」と思っていなければ、どんなに正しいことを伝えようが、クライアントの意識に変化は起こせません。

もっとも邪魔になるのが、上目目線で「私の言うことをききなさい。あなたはわかっていないのだから」という意味あいで伝わってしまうメッセージ(言語or非言語)です。これでは自分には価値がないと扱われている感覚になってしまいます。「一方的に何かを言われる」関係になりそうだと思えば、誰でも耳を閉ざしたくなります。逆に自分のことを純粋に知ろうとしてくれていると相手が思えば、信頼感が生まれます。マーフィー博士はこれを小さなことを丁寧に積み上げていくやり方で達成します。

小さな子を相手にするような面談でも、最初に「これからね、君が今困っていることに関してうまくやれるように私が何か助けられるといいなと思っているんだけど、そのためにはまず君のことを知りたいので、教えてもらえるかい?」と尋ねます。文化人類学者の態度を見習ってくださいと博士は言います。彼らは未知の異文化環境でフィールドワークをする際に、全てのことを自分の側の尺度で見ることを放棄します。そして、現地の人にはどのような意味があるのか、背景にどんな考え方があるのかを知ろうとするために、自分を白紙の状態にします。自分の尺度で現地人を扱えば、下手をすると侵略者と見做されます。同じように、支援者も相手のことをわかったつもりにならずに、「あなたのことを教えてください」という学ぶ態度を取ることが大事です。

博士は10秒程度の短い動画で、小さな子供相手の面談冒頭で「あなたのことを支援するために、あなたのことを教えてもらいたい」という意味の言葉をかける場面を見せてくれました。それに対して子供がうなづきます。何げないやり取りですが、博士の声のトーンや聞き方が敬意を感じさせてくれるのか、子供がうなづくときに安心して息が深くなる様子が見てとれます。

博士がもう一つ面談冒頭場面で相手に許可を求める場面を見せてくれました。20代の若者相手の面談で、「ノート取ってもいいかな?」と尋ねるほんの5秒程度の動画です。相手は「ああ、もちろんいいよ。」という雰囲気で頭を縦に振ります。ここでもやはり相手のガードが下がっていく様子が見てとれます。

こんな小さなことなんですが、許可を求めるという行為は相手を尊重しているというメッセージです。それがルーティーンとして響いてしまっては効果がないでしょうが、言葉通り本当に相手に許可を求める雰囲気で聞かれれば、支援者が上ではなく、同等の立場にたっているということを伝えるメッセージになります。そして、「この人とはわかり合う話ができそう」という安心感が生まれます。

「心理系のセミナーで講師が動画を見せるというと、達人の素晴らしい面談でその技が冴えわたる場面を見本として見せてもらうというイメージがあるでしょうけど、実はこんな小さなシンプルなことの積み重ねを大事にすることが重要なんですよ」と博士が説明するのが新鮮で、腑に落ちました。

そして、博士はときどき自分のマイクを指で叩いて、「ドンドン、ドンドン」という音を発生させてこう言います。「これはクライアントの心拍です。これを感じ取ること、そしてそれを活かす方向で会話を進めることが重要です。相手の主体性が活かされることがもっとも大事なのです。」相手の心拍を感じるというのは、文字通りというよりはメタファーですが、とても臨場感のある例え方でした。

2, 本人がもともと持っているもの、自分で考えたことを活かす。
(支援者側の理論や解決アイデアを押し付けない。)

博士の著書「学校で役立つブリーフセラピー」(金剛出版)にも収録されているエピソードですが、モリーという10才の女の子との面談で、彼女が「クライアント本人の考えを活かす」ことの重要性を素晴らしい言葉で表現しているので、そのエピソードを紹介します。

モリーは両親が離婚して情緒不安定でした。既にグループ面談を受けたり、複数のセラピストの個人面談を受けた後でしたが、それらが役に立たず、悪夢にうなされることが多い状態でした。母親のベッドで寝ているので、「分離不安」というレッテルが貼られて、薬が処方されてもいました。それまでどのカウンセラーもモリー自身が問題(とその解決)をどう考えているのかを尋ねることはなく、ただ査定され、問題が類型化され、介入法が処方されただけでした。しかし、問題はまったく解決しなかったのです。

そして、母親とある新しいカウンセラーを訪ねたところ、初回面接で「モリー自身は問題解決にどんなことが役に立ちそうだと思うか」を尋ねられました。モリーは今まで意見を聞かれたことがなかったのでびっくりしましたが、「(悪夢や不安を寄せ付けないように)ぬいぐるみや枕でベッドにバリケードを作ったらどうかしら」と言ってみました。そしてその通りに実行すると、2回目の面接では成果があったことが報告されたのです。

そして3回目の面談ではもう自分の部屋で眠れるようになったことを喜んで報告するとともに、以下のような言葉を言い放ちました:

「カウンセラーの人たちってわかってないのよ。(クライアントにも)自分の解決法があるのよ。でもカウンセラーは言うの。『これを試してみましょう。次はあれもね』と。でも全然助けにはなってないの。『本当はそうしたくないんだけどなあ』という感じになるのよ。(中略)セラピストの人たちに言いたいのは、私たちは答をもっているということ。私たちは答を前にひっぱり出すのを手伝ってくれる人が欲しいだけなのよ。答は屋根裏かどこかに入ってしまってるんだわ。人にどうしたいかを尋ねた方がずっといいわ。そうすれば、どうしたらいいかを、その人はしゃべりたがるもの。ただ、それが役に立つかわからなくて、試してみようとしたがらないだけなのよ。」 (「学校で役立つブリーフセラピー」より抜粋)

マーフィー博士は、モリーがこの言葉を小気味良くしゃべる動画を見せながら、「もうこれ以上うまくポイントをついた言葉は見当たりません。この10才の子は私たち支援者に必要な教訓を見事にぴったりな言葉で伝えてくれています」と説明しました。

確かに、色々な場面で人に助言しようとするときに、まず本人の考えも聞かずにアドバイスしてしまうと、“いいアイデアなはず”なのになぜか「だけどねぇ・・・」とそれではダメな理由が返ってきてしまうことってよく経験しますよね。フィンランドのSF伝道師ベン・ファーマンも、NIHという略語をよく使います。Not invented here.の略で、直訳すれば「ここで発明されたことではない」ですが、他所からもってきたものは受け入れられにくいという意味です。逆に、「あなたのおっしゃる通りに、・・・をすれば良いのでしょうね」という言い方をすると、多少こちらの意見を混ぜても相手にとって受け入れやすくなるというテクニックとして、ベンはジョークのように伝えてもいます(笑)。

モリーが動画の中で誇らしげに、「私が自分で考えたアイデアでうまくいったの!」という力強いセリフを聴くと、そういうのを引き出すお手伝いをしたくなります。

3, 「うまくいっていること」の上に小さなことを積み重ねていく。
(問題の渦中でもうまくいっている「例外」は必ずある!)

このテーマで印象に残ったことが2つあります。一つは、漫画である部屋の様子を見せて、良いところとダメなところをリストアップする課題。この漫画では、きちんと片付けられていない部屋で母親と思われる女性が酒のグラスを片手に行儀悪い姿勢でダラっとソファに寝そべっていて、子供が勝手なことをしていたりします。これはもちろんダメなところを見るとらえ方です。しかし、よく見ると、家具類はちゃんとそろっていたり、食べるものは用意されていたり、いろいろ良いところも見つかるのです。マーフィー博士はこう言います。「人は誰でも問題によって強いストレスにさらされていると、視野狭窄に陥り、悪いところしか見えなくなります。私たちの仕事は、そんな中でも既に存在する良いところも見えるように視野を広げるお手伝いをすることです。」

「SFアーティストクラブ」のメンバーで大分で活動をしている中村亜紀子さんは、「プラスの眼鏡」をかけてみようというコンセプトを地元の学校で伝える活動をしていて、中学生たちが驚くほど新鮮な捉え方をすることに驚くそうです。問題の渦中にいるときは、誰でも良いところが見えにくくなりますが、普段から「プラスの眼鏡」をかける練習をしていると、いざというときに役に立ちそうですよね。中村さんは現在「プラスの眼鏡」研修で色々なところから引っ張りダコだそうです。

もう一つ印象に残ったのは、「例外ビデオ」をつくる「セルフ・モデリング」という手法。ある子どもの問題行動ではなく良い例外行動を増やしたいという場合:

  1. これから増やしたい(つまり既に時々は実行することがある)行動を特定する。
  2. その子が望まれる行動をとっているところをビデオに撮る。自然にとっている行動が観察できそうなら、待っていてそれを撮れば良いし、シナリオを打ち合わせた上で、ある意味“つくりごと”として撮るのもあり。
  3. いくつかの違った場面でその子が望む行動をとっているところだけを編集して1〜3分程度の短い「大ヒットビデオ」を作る。
  4. 2週間の間、1日おきにその子に動画を見せる。

ダウン症のお子さんに対してこの手法を使ったところ、普通だとできないと思われていた望ましい行動がグンと増えたという事例を、やはり動画で見せてもらいました。素晴らしいです!問題を分析するのではなく、既にある良いところが意識にのぼるようにする回数を増やすことでその行動が増える。こういう回路をつくる方法は他にもいろいろあり得ると思います。

私の知り合いでゴルフが短期間で上達した(10ラウンド程度しかしていないのにスコアが90を切った!)人がいて、どうやったのかを聞いてみました。本人曰く、「練習や実戦ラウンドの後に、家に帰ってお風呂に入るときにさ、その日の良かったショットだけを思い浮かべるんだよ。あとは全部忘れる!それだけさ。」もちろん才能もあったのでしょうが、示唆に富む話です。

今回のレポートは以上です。マーフィー博士は "What's Right With You" の著者バリー・ダンカンさんとも親しくて、彼のチームが開発したセッション評価尺度(面談終了時にクライアントにしてもらうスケーリング)や効果評価尺度(前回面談のあとどのような変化があったかのスケーリング)を大切にすることで、クライアントからのフィードバックを頼りに相手に合った対応を調整し続けることの重要性も強調していました。それはまた別の機会にレポートさせていただきます。

今回の通訳仕事を通じて不思議に思ったのは、マーフィー博士の話す内容はコンテンツとしては僕にとって目新しいものはあまりなく「ああ、知ってる」というものばかりなのに、なぜか新鮮味がありインスパイアされるということでした。きっとそれを単に知っている人ではなくて、“それを生きている”人として話をするからなんだと思います。自分もそうありたいものだと思いました。

<歌のおまけ>
歌のおまけ
実はジョン(ここからなぜかファーストネーム・笑)と僕は音楽の趣味が一致していることが判明!六本木の洋楽専門カラオケBAR(なんと泊まっていたホテルの三軒となり!)で前夜に大盛り上がりしました。 ジョンは旅行用のミニギター(Washburn "Rover" travel guitar)を持参したくらい音楽好きで、フェイスブックには音楽専用のアカウントも持っています。残念なことに懇親会場は演奏禁止だったので、受講者の皆さんからワークショップの最後に何か演奏をとリクエストがありました。ジョンは子供たちへの支援に関するセミナーだったからCSN&Yの"Teach Your Children"を一緒にやろうと僕を誘ってくれて、ワークショップの最後に二人でハモりました。休憩中に10分ほど練習しただけなので、粗い感じではありますが、よかったら聞いてください♪
SFアカデミア 青木安輝
posted by 株式会社ソリューションフォーカス at 22:17| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー/ワークショップ レポート

2017年03月05日

「OKメッセージ」=「相手に関心を持って丁寧に対応する」という生き方

春のスペシャルワークショップ(3月4日開催)参加体験記  by 青木安輝
「OKメッセージ → “相手に関心を持って丁寧に対応する”」
- 定年退職後 編 - 言わない決意/言わない勇気
by 田近徹太郎さん

今日は啓蟄。土ごもりの虫も動き出すくらい春らしくなる日。
僕の住んでいる八王子(東京都)は、まさに外に出て体を伸ばしたくなるようなポカポカ陽気の日曜日です。

昨日開催された春のスペシャルワークショップは、そんな春の暖かさを感じさせてくれる田近徹太郎さんがご登壇されました。ここに記すのは参加した私の個人的感想です。感銘を受けたことが沢山あって、長〜い感想文になりますが、良かったら読んでください。

まず冒頭の自己紹介で感慨深かったのは、2008年の第一回日本ソリューションフォーカス活用事例共有大会(J-SOL1)に参加された外資系製造業の管理職の男性が、そこで心に響く何かを感じ、それ以来10年近い年月の間、SFを会社を良くするために活用したり、「OKメッセージ」とは何なのかを様々な人間関係の中で探究し続けてこられたという事実でした。

その結果として、自分の生き方の中に自然にSFが溶け込んで、SF用語を使わず自分の言葉で語るSFになっていることで、SFを学んだことがない人にとってもスッと入ってくる人生の語りになっていたのが素敵でした!
今までにSFのセミナーや大会に参加された方々の中に、こんな風にSFを見事に自分の個性にブレンドした"SF inside"な方がいるのだと思うと、「SFアカデミア」主宰者として大変勇気づけられました!

日常接する身近で大切な人たちとの間で生じる心の中の葛藤、そこから始まる自己探求、様々な葛藤解決の試み、その失敗と成功。それらを静かで柔らかな口調で語る田近さんの姿は、大人の男性としてお手本にしたいと思うくらい、誇張もごまかしも無用な卑下も力みもない自然体に見えました。

ここまでが前置きです・・・長いですね(笑)。
ここから先は独り言調にさせていただきます。

いやあ、なんつっても感銘を受けたのは、自分も周りの人も無理やり変えようとしないことを徹底しているところ。でも最初は「ダメなところを見つける」→「変えようとする」のパターンでお互いに不快な思いをするところからスタートしてるんだよね。

退職して毎日長い時間を一緒に過ごすことになった家族に対しては、それまで一緒にいないから気にしないですんだことに対して違和感や不満を感じることが多くなる。で、最初は(できるだけ)やさしい言葉で指摘して、論理的な説明も加えて相手を変えようと試みる。そして相手が行動を変える努力をしてくれるんだけど、本来の輝きを失っていくし、お互いの間がなんとなくぎこちなくなっていくっていうデメリットが気になり始める。

そこから先の田近さんの自己探求プロセスがとっても興味深かった。

これからずっとこの不快な感覚をお互いに味わうのはゴメンだと思った田近さんは「やっぱりSFでいこう」と思った。まず悪いところの指摘をやめる。そして欠点と見えていたところは、まさに相手の個性を形成している重要部分で、何らかの役に立っているのではないだろうかという視点でとらえ直した。

「『片づけができない』のは欠点と思ってきたけど、『大らかさ』の現れ。神経質な自分が落ち込んだときには、それによく救われたよなぁ。」

「『計画性がない』やつって思ってきたけど、『直感的な鋭さ』があるから(論理性優位な)人には考えつかないようなアイデア出せるよなぁ。」

等々、その他いくつかの欠点はすべて長所の裏返しと思えたそうだ。

多分これを読んだ人は、「ああ、あの手法ね」と何等かのスキル用語を思い浮かべたのではないかと思う。しかし、田近さんはこのことを心理系の専門用語を使わずに、自分の人生のストーリーとして語ってくれたので、聞いている側にも自然と自己探求を促す効果があったと思う。

やたら“用語”とかフレームワークとかを使いたがるプロ講師等にはない“素”の良さだね。「素人」ってそういう意味?!と妙に合点。

さて、欠点の指摘はなるべくやめて、相手の個性を長所として見る・・・。
いいよね。しかし、これですべてはうまくいきましたとさ・・・にならなかったんだ。

確かに相手はまた輝きを取り戻していった。ぎくしゃくした感覚もなくなって笑顔が戻った。だけど、今度はなんだか自分が不全感を感じる・・・。

これじゃ、ただの我慢じゃねーか(笑)。
我慢だから、ときどき圧力がたまって暴発もする。ぎゃっ。

ここでグッと自己探求が深まった・・・その結果が

言わない決意(覚悟) →  言わない勇気

というサブタイトルにもなった核心部分につながっていく。

この言葉の意味を田近さんが体験した通りに僕の言葉で再現できる自信はない。だけど、僕が受け取った意味はこうだ。

「我慢」というのはやらされ感と同じで無理に自分に強いている意識。

そんなんじゃなくて、自分の得意としている「覚悟を決める→継続する」でいこうと田近さんはとらえ方を変えた。若い頃から、毎日腕立て伏せをやると決めたら1日も休まず病気の時も欠かさずやるくらい強い決め(覚悟)を持てるのが自分の良さだという自覚があるので、我慢じゃなくて「決め」でいこう!

えっ、「決め」って自分への強制じゃないの?
これってただ言葉を言い換えただけじゃないの?
それで否定的な感情を持たないようにできるの?

などと疑問が湧く人もいるだろうと思う。

でも、僕は了解した。受け入れたんだなあって。田近さんは実際「受けいれる」は自分にとってキーワードだとおっしゃった。

「言わない決意(覚悟)」をサブタイトルにするくらいなので、ここはこの3時間のワークショップの肝だったと思う。だが、どうやったら「受け入れる」ことができるのか、そして「決め」を持つことができるのか。自分の人生における似たような体験を思い出して、多分それと同じようなことなのかなと想像することはできるが、田近さんに代わって説明することはできない。田近さんが使った言葉は、

“自分の生き方として それをやると決める。”

それが我慢でないことをより良くあらわす言葉として、「勇気」という言葉がしっくりきたそうで、「言わない勇気」というのがたどりついた表現。

この勇気をもってからは、また見えてくるものが変化したそうだ。まだ完ぺきでなくても、こちらの希望に沿う努力をしてくれていることが見えてきたり、今までやってくれなかったことをしてくれる「例外」が見つかったり、そういう努力の成果が少しづつ進歩しているのがわかったり・・・。

ここで、稀勢の里の父親の発言が引用された。彼が横綱になるまでには何回ものつまづきがあった。マスコミは「またダメか」と批判的なだけの論調だったけど、父親は「息子は負けた中でも少しづつ進歩している」と言い続けたそうだ。それはなぐさめではなく、大切な息子が大事にして いることを応援する肉親の目だからこそ見えた、小さいけど前向きな違いだったのだろう。田近さんは、「(批判的なことを)言わない勇気」を持ってから、逆に家族のそうした小さな違いが見えるようになったとのこと。

相手に関心を持って丁寧に対応する。

まさに!

田近さんは、自分自身へのOKメッセージをとても大事にしていることを最後に語って、ワークショップを締めくくった。

ある時点で、自分に対してもっともソリューションフォーカスしていないかもしれないと自覚した田近さんは、自分が欠点と思ってしまっていることをリストアップして、それの裏返しである長所を自覚した。そしてそんな自分を認めた上で、その自分を丁寧に扱ってあげるための問いかけを自分自身に対してした。

「自分は何がしたいのか?」

「自分は今 ここちよい と感じているか?」

「自分の身体をいたわっているか? 負荷をかけすぎていないか?」

「自分に過度の期待をしていないか?」

「朝一番と寝る前にリセットしているか?」

「身近な人たちに“ありがとう”をたくさん言えてるか?」

「自分自身に“ありがとう”を言っているか?」

これらの自問シリーズの説明の中で、僕にとって一番印象深かったのは「自分に過度の期待をしていないか?」のところで紹介された明石家さんまのエピソード。

TV番組の中で「落ち込むことはありますか?」という質問に対してのさんま師匠の答えは、「ないっ!だって自分に全然期待してないもん。落ち込むのは自分に期待し過ぎとるからやぁ。」

等身大でいこうという想いが気持ちよく高まって終了した3時間だった。

参加者の皆さんそれぞれにとって、印象に残ったこと、想いが及んだこと、影響を受けたこと等は違うと思うが、やはり生き方ベースでの体験談は考え方に賛成か反対かと関係なく、自分を振り返らせてくれたことは確かだと思う。

田近さん、本当にありがとうございました!

田近氏 ワークショップの様子
SFアカデミア
posted by 株式会社ソリューションフォーカス at 18:53| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー/ワークショップ レポート

2014年12月01日

第32号【1-A】SFアート・ラボ第一弾「幸せに役立つ自分の変化を生み出す」(横田理彦氏) レポート

SFアート・ラボ第一弾
「幸せに役立つ自分の変化を生み出す」(横田理彦氏) レポート

11月22日に開催した“SFアート・ラボ”は、芸術の秋・収穫の秋に相応しい3時間でした。ソリューションフォーカスの幅広さや奥深さをあらためて感じることが出来ました。

横田理彦氏SFアート・ラボにて
今回のSFアーティスト横田理彦氏は、キヤノン株式会社で、自ら“プロのサラリーマン”と言い切る位、仕事に誇りを持って取り組んでおられます。
その仕事の現場で、部下や上司や同僚に対してのSFコミュニケーションや姿勢・考え方から、他の手法とソリューションフォーカスを上手に組み合わせた会議の進め方や仕組み作りまで、いつも「面白い!」「凄い!」「へ〜〜」と思わせてくれます。
書籍「幸せのメカニズム」
今回は、前野隆司著(慶應大学大学院教授)「幸せのメカニズム」(講談社現代新書)に基づく幸せの指標とソリューションフォーカスの視点との関係について、横田さんの考察を交えながら、ワークやディスカッションを中心にワイワイ楽しい3時間でした。
途中では、横田さんが仕事の中でのSF事例もお話くださり、これがまた“アートなウルトラ級のSF”でした。
SFアート・ラボ第一弾プログラム
【第一部】SFと“長続きする幸せの関係”
【第二部】過去の自分の変化、脱皮を振り返る
【第三部】幸せに役立つ自分の変化を生み出す・・X年後に向かって
【第一部】SFと“長続きする幸せの関係”
3つの幸せ指標を使って、各自セルフチェックをしながらお互いにシェアー。
  1. ディーナー博士(イリノイ大学)の『人生満足度尺度』
    過去から現在に至る自分の歴史とその結果。
  2. 『感情的幸福 PANAS(Positive and Negative Affect Schedule)』
    常に変化する指標。対話の中で生まれる感情的な幸福なので、条件次第では、ネガティブになっていくこともある。
  3. 前野教授の『幸せの4因子』(「幸せのメカニズム」前野隆司著より)
    現在から未来に向けた、リソースを意識した幸せ指標

3つの指標は分析の結果であって、いかに長続きする幸せを創り出していくのかという部分には言及していないそうです。そこで登場するのがソリューションフォーカス!
“長続きする幸せ”を創り出していくことに、ソリューションフォーカスがどう関係いくかを「幸せの4因子」と「ソリューションフォーカスの視点」を使って、横田さんが考察してくれたものの概略が下記になります。

《幸せのメカニズム:幸せの4因子》
双方向矢印
《SF》横田氏考察

第1因子:『自己実現と成長』 (やってみよう因子)⇒スモールステップ
第2因子:『つながりと感謝』 (ありがとう因子) ⇒共鳴と増幅・ルーツと多様性
第3因子:『前向きと楽観』  (なんとかなる因子)⇒スモールステップ
第4因子:『独立とマイペース』(あなたらしく因子)⇒プラットフォーム

SF対話(OKメッセージや質問)で、この4因子に関する視点をまんべんなく広げていく事で、長期的な幸せにつながる可能性がある

SFベーシックセミナーで伝えるソリューションフォーカスの『3つの焦点』は、“長続きする幸せ”を創り出していく事に大きく関与していると、あらためて感じました。

欲しい未来 「どうなりたい?」 →向かいたい方向が描ける
既に出来ていること 「出来ていることは?」 →安心感が生まれる
スモールステップ 「あと一歩進むには?」 →希望感がわく
【第二部】過去の自分の変化、脱皮を振り返る
過去の自分の価値観のイノベーション(変化や発見)についてグループでシェアー。
これは自分自身をモデリングする作業です。
過去の自分の変化や脱皮体験を振り返る事は、自分へのOKメッセージやリソースとなり、それは周りへの感謝に繋がり、更に未来(FP)への希望にも繋がりました。
【第三部】幸せに役立つ自分の変化を生み出す・・X年後に向かって
最後は、升シートを使って、X年後に向かって長期的な幸せを創り出していく物語を作成して二人でシェアー。皆様、互いに相手の話に興味を持って熱心に聴いてOKメッセージを自然に出し合っていました。流石、ソリューショニストの集まる「場」でした。  

このシートが面白かったことは、まず「自分ではコントロールできない変化」から書く事。例えば自分や家族の年齢とか予測できない社会の動向など。ここをきちんと押さえておく事が、長続きする幸せを創り出すには大切なポイントのようです。

升シート

今回のSFアート・ラボには、私の大切な友人を誘って一緒に参加しました。彼女には私との会話を通してソリューションフォーカスを少しだけ伝えてはいましたが、セミナーなどに参加したのは初めて。
それでも安心して誘えたのは、ソリューションフォーカスの土台が“相手への敬意・尊重であるからです。
今回、あらためて強くその事を確信しました。

そして、参加した友人からは、
「自分自身をじっくり考え直すことができました。苦手だった『初対面の方との会話』がスムーズにできたことも自信につながりました。新しい生徒さんにも早速役立ちます。OKメッセージを出す為には相手を良く知ること。来年からやってくるつらそうなお仕事(笑)も、楽しみに変わりそうです」という嬉しいメールが届きました。

まさに、横田さんやご参加者の方々の“相手への敬意と尊重”が、彼女に素敵な時間を創り出してくれたのだと思います。感謝、感謝。
彼女は「好きな事と得意な事とやりたい事」がゆるぎなく一致していて、更に仕事にもなっているという何とも羨ましい才能の持ち主です。
自分のフューチャーパーフェクトに向かって一歩一歩長い年月をかけて、今の状態を自ら創り出してきた友人を、これからも私に出来るソリューションフォーカスの視点で応援していく事も、私自身の幸せでもあると思いました。

『SF insideな組織』は“幸せ感”を感じる『SF insideな個』が増えて、個も企業も共に継続的に発展していくというスパイラルになるのでしょう!

♪懇親会は7名で盛り上がりました♪ SFアート・ラボ懇親会
SFアカデミア by 藤沢さつき
posted by 株式会社ソリューションフォーカス at 08:32| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー/ワークショップ レポート