2018年02月21日

「ミドルエージャーの100年人生俯瞰」ワークショップ

「ミドルエージャーの100年人生俯瞰」ワークショップ
〜 企画のきっかけから第一回までの顛末記 〜

青木 安輝

<ある日のこと・・・>

ある日、仕事の合間に事務所の本棚をなんとなく眺めていました。で、いつもと違う感覚になっている自分に気づきました。以前だったら、「いつか読まなきゃ」とうしろめたさを感じていた未読本に対してもう読まなくていいやと思ったのです。読んでいない本や魅力を感じなくなった本が邪魔な気がしました。そこで、鮮明に記憶が残っている本、自分が強く影響を受けたと思う本、再度読みたくなる本だけを取り出して机の上に並べてみました。もともと読書家ではないので、ほんの十数冊程度でした。しかも若い頃に読んだ本が多く、その並びを見たときに青春時代の匂い(様々な感覚)が蘇ってきました。そして、もともと自分がどんな人生を送りたいと望んでいたかを「思い出した」気がしました。その後の人生で、その希望通りに進んでいった部分もあるし、方向転換や現実的な妥協をしてきた部分もあります。そして、あらためて人生航路の見直しをしてみたくなりました。

<「LIFE SHIFT〜100年時代の人生戦略〜」(リンダ・グラットン他著)

それと時を同じくして、「LIFE SHIFT〜100年時代の人生戦略〜」という本を読み、実際に何年生きることになるかは別にして、人生を本気で100年で考えるということが必要だと痛感しました。「子供」と「大人」という人生区分しかなかった時代から、産業化社会では新たに「ティーンエージャー」「引退者」という区分が生まれ、人生は「教育」「仕事」「引退」の3ステージで構成されるというのが常識になりました。しかし、長寿化により人生100年時代になると、従来「引退」という区分に入っていた60代以降の時間がとても長くなります。それを苦しい時間にしてしまうのか、生きることの豊かさを自分なりに長く享受できる期間にするかの分かれ目を決定する確立されたノウハウはありません。むしろ個人差が大きく、誰にでもあてはまる典型的な人生100年モデルなどないし、私たちは自覚している以上に人類史上初めての長寿化社会誕生の混沌の中にいるわけです。「前の世代(や隣人)と同じでいい」と思っていると「こんなはずではなかった」という状況になるケースも増えるでしょう。つまり、誰もが自分なりに深く考えて自分なりの高齢時代の過ごし方を見つける必要があるということになります。それをちょうどいいタイミングですれば、悲観的になる必要はなく、自分なりの望む未来が見えてくるはずです。早すぎても遅すぎても効果は薄くなります。今年還暦を迎える自分としては、まさに今そういう大きなスパンの視野で考えを深める時期だと思いました。

<「ミドルエージャー」= 自分の可能性を見定め直す年代>

直訳すれば中年期の人となる「ミドルエージャー」ですが、「中年」というのは、一昔前は老人の一歩手前というニュアンスでした。しかし、最近では60才くらいでは「老」という言葉がまったくあてはまらない人が多くなりました。ゴルフ場に行くと、昔は70才と聞いたらプレーできるだけで幸せという年齢だったのが、今では競技志向のままエージシュート(年齢と同じかそれ以下のスコア)を達成しようという人が珍しくありません。老化指標である「歩行速度」は1990年代と比べて2002年時点で11才ほど若返っているという科学的データもあります。最近では80才を超えた女性プログラマーが高齢者向けのアプリを開発したというニュースが話題になりました。日本の90才以上の人口はなんと250万人で、100才以上だけでも6万人います!つまり2018年現在60才前後の人は、これからの医療技術の進歩や健康意識のさらなる高まりなどを考慮すれば、高い確率で90才以上生きることになりそうです。

そうなると、「ミドルエージャー」を単に老齢化一歩手前の年代という消極的な捉え方ではなく、新たな視点で捉える必要があります。今までの生き方とこれからの生き方の中間(middle)にいて、自分の可能性を見直す再チューニングに適した時期の人。そして次のライフステージを自分なりに納得して迎えられるよう、未来に向けての可能性を見定める期間を生きている人という意味あいが適当でしょう。

また色々な経験をしてきて、何を幸せと思えるのかに関しての知恵が深まっているので、バランスのとれた中庸(middle path)の大切さを認識している世代という意味もあります。体力や知力・気力などは若い頃に比べると低下してくるのは否めませんが、逆に求め過ぎもせず、遠慮し過ぎもせず、自分の状況に合った「ちょうどいい具合」を見つけられる能力が高まってくる年代とも言えます。

そういう意味ではミドルエージャーの定義は年齢で簡単に区切れません。40代、50代、60代がボリュームゾーンですが、30代以前でも70代以降でも、人生のミドルポジションにいて、「これまでの人生」と「これからの人生」を俯瞰した上で、自分なりの人生航路を見定めようとしている人は、すべてミドルエージャーと言えます。

(*) まさにこの原稿を書いている最中(2018年2月16日)に配信されたニュースで、政府が高齢者を65才以上とする定義を見直すことが正式に閣議決定されたと発表されました!

<「100年人生俯瞰」とは>

2月11日に開催された第一回「ミドルエージャーの100年人生俯瞰」ワークショップに参加された皆さんに伺うと、このタイトルを見た瞬間に「ピンときた!」という方が多かったです。「今まで頑張って生きてきたけど、このままその延長線上にいればいいのか、それとも・・・」までは考えるけど、この「・・・」の先に何があり得るかをじっくり自問自答したり、色々な人と対話をする機会がない、もし機会があるなら是非そうしたい。そう思う方は潜在的に数多くいるようです。私自身まさにその一人でした。

私は大学では社会学専攻で、就職後は人間コミュニケーション関連の近接領域で36年間仕事をしてきました。だから人と接すること自体が仕事であった割合が大きいです。その経験から、人は本当に多様なので、有名講師や研究者の「人は〜である」という教えに接しても、自分にはあてはまらないと感じることが沢山あること、人の生き方は教えられるものではなく自分が発見するものだということを思い知らされました。ましてやワークショップに来られる人たちは、人生経験を積んできたミドルエージャーです。なので、新たな情報提供やノウハウ提供は一切しない、参加者同士の対話のみで各自が自分と出会い直す場になるようなワークショップを企画することにしました。

「人生俯瞰」は2つのことを通じて自分の人生を“ながめてみる”体験です。一つは「これまでの人生」と「これからの人生」に関して「語る」ことを通じて、それらをどう捉えている自分がいるのか確認すること。もう一つは、他の多様な人たちがそれぞれの人生を語るのを「聴く」という刺激によって、自分の人生のとらえ方を見直すことです。形の上では他者と話しますが、内側で起こる自分自身との対話を大切にします。人の話を聴いて思ったことを伝えることもしますが、本人の肯定的な自問自答を深めるためのサポートとしてするだけです。批判的な忠告や指導のようなことは一切しません。進行役の私も含めて、他者を変えようとすることは一切ないということです。また、コミュニケーションスキルのセミナーではないので、自由な雰囲気の中でリラックスしてリビングルームで茶飲み話をするのに近いような環境づくりをこころがけました。

<ワークショップ概要>

  1. 事前準備:

    ワークショップに来てからいきなり自分の人生について語ってくださいというのでは、とまどう人もいるかもしれないということで、自分の人生について語るための事前準備ワークを9つメールでご提示しました。どれをやっても良いし、やらずにぶっつけ本番で語るのも良いということにして、選択できる幅を広くしました。9つの項目は下記の通りです:

  2. ★「これまでの半生」について語るための準備:
    • 「 半生年表を書いてみる」
    • 「お気に入りを並べてみる」
    • 「スパークリング・モーメント」リストをつくる
    ★「自分の“現在地”をとらえる」試み:
    • 「昔の日記(やその他自分が書いた文章)を読む」
    • 「『等身大の自分てどんな自分?』と自問する」
    • 「ファクトチェック」
    ★「これからの自分の人生をイメージする」ための事前準備:
    • 「バケットリストを書く」
    • 「若い頃の夢を思い返してみる」
    • 「自分の訃報記事を書いてみる」
  3. プログラムの内容:

    「語る」人と「聴く」人がいるだけで、何の「教え」もないいたってシンプルな語り 場です。最初に全体で、進行についての説明とアイスブレーク的な自己紹介があり、 次に小グループに分かれて3つの対話ワークをします。そして、最後にまた全体で 集まって、一言づつ感想をシェアします。途中に昼休みや小休憩をはさみます。

    対話ワーク①:「生まれてから今日までのことを語る」
    対話ワーク②:「スパークリング・モーメントを語る」
    対話ワーク③:「未来を語る」

    「スパークリング・モーメントのリスト」「ミニ・バケットリスト」「望んだ通りになった未来の年表」などを書く時間も設けられ、「語り」の後には「リソースゴシップ(良い噂話)」とフリートークがつづきました。

  4. ソリューションフォーカスな要素と気楽な雰囲気づくり:

    対話のスピリットとして「認め合い、学び合い、応援し合う」というSFアカデミア・クリードが紹介され、基本的に肯定的な雰囲気の中で進行されました。

    但し、コミュニケーションスキルの研修ではないし、コーチングやカウンセリングの場ではないので、聞き手は相手に役立つような賢いコメントや質問をする必要もないし、場合によっては、聴いている間に自分のことを考え始めてしまっても良いとしました。なるべく語る側も聴く側も余計なプレッシャーを感じずに、語り続け、聴き続けられるような進行を心がけました。

    イメージ的に言うと、炉端で問わず語りに始まった誰かのモノローグを一緒に火を見ながら傍に居てただ聴いていればよい、というくらいの“ゆるい”感じで「語る」と「聴く」を繰り返しましょうと呼びかけた感じです。視線を合わせようとか、ちゃんとあいづちを打とうとかそんなこともあまり意識しなくて良いですよ。自然に必要な分だけ起こるからと。また机には明るい色のテーブルクロスがかけられ、お菓子や飲み物が用意されて、茶飲み話的な雰囲気でも良いような軽い演出も加えられました。

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ワークショップの出だしに提示した自分の半生分の写真コラージュです。これをつくるのに(写真を選ぶのに)半日かかりましたが、なんだかここまでの人生を“俯瞰”する感覚で楽しかったです♪ “人生俯瞰”した後の皆さんの顔、爽快感がただよってます!

<参加者の感想>

WS終了後にメールで配信したアンケートへの回答の一部をご紹介いたします。

集合写真
“人生俯瞰”した後の皆さんの顔、爽快感がただよってます!

「ミドルエイジからは自我によるセルフコントロールをゆるめて、大河の流れに身を委ねるためのゆとりが必要だと思いました。ゆとりを持つと自分に必要なサインに気づくことができるようにおもいます。」

「他の方が軽く大変な経験を話していたり、私だったら気にしないことを重要に思っていたりで、人の考え方、行動、こだわりが多様であり、どれも比較できない大切ことばかりで、映画の中に入ったような変な良い気持ちとなりました。」

「運よくここまで来られたとつくづく思いました。これまでの環境に感謝しました。まだ来ない未来に対して不安ばかりの否定的な感情や捉え方を持つのではなく、今できることをシッカリやっていこうと思いました。」

「“歳をとってからやること”と位置づけていたことが、実はもう既に始められるということがはっきりしました。また、臨終の年齢を仮定して、人生を俯瞰してみたことで、先ではなく、今やること、この5年内にやることなどが、くっきり見えてきました。」

「この歳になり、今ならできる、自分に備わったものを信じて、あるがままに五感を開くことが一番大事、そうすると、残りの人生を豊かにできる!と思えました。」

「落ち込んでたりで、一歩踏み出すのに躊躇してましたが、参加したおかげで早速一歩踏み出せました。あとは勝手に足が数歩進んでいくのを待つ状況になってます。」

「実行したいこととともに実行しないときめたこともやや明確になりました。具体的には会社退職後はボランティアというか人の為に何かをするということはせず、わがままに生きるということに後ろめたさがありましたが、前よりクリアな捉え方ができました。」

「『歳をとると、やれることが狭まっていくし、やれる度合いも下がる』と思い込んでいましたが、WSに参加し終えてみて、『やりたいことを死ぬ時まで続けられるんだ』と捉え方が変わりました。気持ちが明るくなりました。」

「自分のこれからの人生のイメージが湧かず、漠然とした不安ばかりが募るような状況でしたが、WSを通して思いの外、自分の人生にとってなくてはならないもの、これだけは大切にしたいというものが自分にはあるらしい…ということを実感できました。」

「老後の生活資金や認知の衰え(認知症)などに対する恐れはあるが、人生は可能な限り強みを生かすことだということがわかった。現時点で欲しかった手ごたえを得ることができた。」

「自分の年齢よりもずっと先輩の方々が、これまでを振り返りつつも、これから先の人生について生き生きと好きなことを好きなように語っている姿を見て、『誰にも分からない先のことなのだから、自分も好きなように思い描いて(妄想)いいんだ…』と、心の底から思えて安心できました。」

「人生の振り返り時間を改めてとっていただきました。しかも聞いてくれる人がいるこれほどわがままな時間は普段ありえません。ありがとうございました。」

「参加者のみなさんのキラキラした自分語りが素晴らしく、さすがソリューショニスト!と感じました。本当にありがとうございました!」

記念すべき第一回目の「ミドルエージャーの100年人生俯瞰」ワークショップに参加してくださった勇気と好奇心にあふれた皆様、本当にありがとうございました!!

<今後の予定>

このワークショップを企画・準備する中で、私自身も自分の「これまで」を振り返り、「これから」について語る機会を持たせていただき、あらためて、自分の人生を思うように生きたい、そしてそれは可能だと思えるようになりました。こういう対話の機会を持つことで、自分を活かす道がより鮮明に見えてくるであろうミドルエージャーが世の中には沢山いるのではないかと思います。これを読んでいるあなたはいかがでしょうか?

第一回目を終えてみて、ミドルエージャーの人生俯瞰対話が持つ効果に関しては確信が持てたので、今年は「ミドルエージャーのための人生俯瞰」ワークショップを各地で開催したいと思います。

自社主催のものと、地元開催を望む方が主催する会に私が講師としてうかがう形式と両方あると良いと考えていますので、ご自身が主催者となり地元開催をご希望される方はお気軽にご連絡ください。温泉地や自然の中での合宿形式をご希望される声も届いておりますので、色々な企画を考えたいと思います。

まずは東京での第二回目の開催を告知させていただきます。

日時: 2018年4月29日(日) 午前10時〜午後5時30分
会場: ちよだプラットフォームスクエア(東京都千代田区)
参加費: 1万円(税込)
定員: 15名
問い合わせ・地元開催のご提案等はこちらへ:aoki@solutionfocus.jp

お申込みはこちらまで↓
http://sf-academia.jp/registration/reg_form.php#spesialWS

SFアカデミア 青木安輝
posted by 株式会社ソリューションフォーカス at 09:00| Comment(0) | TrackBack(0) | SFアカデミア
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